スマホ中国語

ウォーキングマシンの上で歩きながら…

(四)

じむの大きな窓ガラスに、灰色の雲間からお日様の顔が覗かれた。陽射しを浴びながら、紺袴に竹刀を持った学生たちが、隣の武道場に向かっている。つい最近見たTVドラマ「龍馬伝」のシーンが浮かんできた。日本では江戸時代、すでに女性も男性と同じ道場で堂々と稽古していた。しかも、龍馬が女剣士からしごかれたことも鮮烈だった。

他にも、日本発祥のスポーツである柔道。女性同士も相手を投げ倒し、押さえ込み、当て身をして攻撃防御の技を競う。

80年代初頭、中国の大学で日本の柔道を放映した時、「えーっ、女性もするの―?」という、皆の驚嘆の声が今でも耳に蘇る。

当時、日本人女性といえば、まず和服姿が目に浮かんだ。三つ指をついて夫を迎えたり、夫より三歩下がって歩いたりする婦人の姿が、時代劇のみならず現代劇にも見受けられたものだ。

「大和撫子」に宿る外柔内剛の精神、そして武道は身体を鍛錬するだけでなく、精神修養が重視されていることは、この国に長く住んでみてようやく分かったことだ。

(五)

中国人の伝統的な「修心養生」のスポーツに、太極拳がある。緩慢な動きの中に、集中力と身体のバランス、筋肉を鍛える。

著名な中国人作家・思想家である林 語堂は「中国=文化と思想」(1935年)の中で、「中国人の精神は多くの点で女性的だ」と指摘している。

その昔、為政者は中国では士大夫―科挙試験に合格した官僚・知識層エリートたち。それが日本では武士である。その精神は、それぞれの国民性にも影響していると考えられる。中国とは対照的に、日本人の精神は多くの点で男性的だと感じているのは、わたしだけだろうか…

(六)

今日の中国人の考え方は昔とは大きく変わっており、特に女性の変化が著しい。きっかけとなったのが、1949年10月1日の新中国誕生である。その翌年には新しい「婚姻法」が施行され、「夫婦別姓」「男女同工同酬」は女性の社会進出を促進し、夫婦共働きが一般的になった。私が来日した翌年の86年に「男女雇用機会均等法」が発表された時、内心「えーっ、今さら?中国では36年も前からやっているのに…」と思った。

88年、日本の大学院の課程を終了した私は、同期の女性が「永久就職です」と言ったので、てっきり公務員になるのかと思っていたら、のちに彼女が結婚し専業主婦になったことを知って驚いた。

中国では「専業主婦=家婦」といい、当時はほとんど年配の女性であった。新中国誕生前まで続いていた、孔子の「女子無才便是徳」(女子は無知が美徳)の教えに従って、あるいは貧しさから学校に行かせてもらえず、家に留められた都会の既婚女性のことを指していた。

対照的に、日本では江戸時代から「寺子屋」で男女ともに「読み・書き・算盤」の教育を受けていた。いち早く近代国家の基盤が作られていたのだ。

光陰矢のごとし、20世紀末となり、日本ではバブル経済の崩壊に伴い、「終身雇用」も「永久就職」もいつの間にか時代の波に呑み込まれてしまった。

グローバル化の時代に入り、中国をはじめアジアの若者のエリートを他国と競って採用する日本企業を見て、国際化を実感しつつも、海外から流動的な人材を獲得するより、眠っている日本人女性の知的な潜在能力を発掘した方が、この国の発展にとって、よほど堅実なやり方ではないかと思う。

最近、第一線で活躍する若い女性エンジニア、「機械女子」たちに関する報道を見て、日本の将来に光が見えた。と同時に、背中を押された感じもした。

ウォーキングマシンで30分歩き続けることは、最初はついていくのが精一杯だった。慣れるにつれて、色々なことが頭の中を交差する余裕が出てきた。この文章も、そんな時に考えたものである。

  山本袁葉

編集者  丁 雷